まだまだ君は日常のなかに

 推しに出会って一年が経った。すぐにやめてしまったので二ヶ月も応援できなかった。最後のライブとあの忌々しい知らせからすでに十ヶ月近く経ったけれど、まだ、忘れられない。自分でも重いのは分かってるしストーカー気質すぎるのは分かっている。推しツイッターのアカウントは何個も知っているし、ほとんど呟かないけど監視もしているし、昔のブログやらなんやら、ネットの海の中に推しの欠片をさがしだしては保存してもいる。自分でも気持ち悪いと思う。

でも、好き。もうリアコなんてレベルじゃなくない?彼女がいるとかいないとか考えたくないし実際彼女?といるところを見たわけだけど、でも、好きで、人生で一番好きでやっぱり世界で一番好きな推し。わたしが初めて好きになった人間が、推し。わたしが銀河系で一番好きな生命体が、推し
もうどうしようもない。

どうしていきなりブログを書いたかというと、さっき、深夜特有の憂鬱やぼんやりとした不安やらなんやら(芥川龍之介かよ)やらに襲われ心の拠の推しのことを思い出していろいろ調べネットからまたひとつふたつ新しく推しが存在する証拠を見つけ出したのが嬉しかったから。でもそれと同時に、あのころのわたしのツイートやら推しとの幸せそうな会話を見返して(まあアカウント消しちゃったから見れる範囲でだけど)めちゃくちゃ辛くなったから。割とリアルに涙が頬を伝った。胸が張り裂けそう、まで言わないけれど胸にタバスコ振りかけられた感じ。
あれからもう何にもハマれないのじゃないかと心配してたけどわりとふつうにオタク趣味はできた。でも、男性アイドルには、もうハマれない気がする。女のアイドルはいいものだ、柔らかい。何も考えずヲタ芸をするヲタたちを笑いながら見れて、ステージの上で歌い踊るめっちゃ可愛いアイドルを純粋にアイドルとして見られる。そこにはリアコなんてないから。
男性アイドルはまだやっぱり無理だ。ジャニーズのヲタもやめた。最近はもう話題にあまりついていけない。ほぼトラウマ化している。

 あーーーどうすればいいかわからない。好き、好き。好きでめちゃくちゃ結婚したい。せめてひと目だけでも見たい。つまること会いたい。メールも返事が来ない。もう何も考えたくない、推しとの私信は楽しかった。でももう飽きられたのか?関係を切られたのか?妹みたいって言ってくれたでしょう。
推しに、ひたすら、会いたい。

彼女連れの推しになんて会いたくなかった

 この間、私の家の近くのショッピングセンターで例の推しに会った。

彼女を連れていた。チャラくなっていた。でもやっぱりかっこよかった。

 推しが好きすぎて、すがるような思いで、今年のはじめに推しの仕事用のメールアドレスに迷惑を承知で長文メールを送った。すると、返事が来た。ファンの人と連絡を取らないって事務所と約束したから、といいつつ推しも長文で返してくれた。わたしは彼の熱狂的ファン第一号と公認されたらしい。聞いたか、他のファンの奴ら。それから入試を応援してくれた彼に合格の報告とお礼を三月中旬に伝えた。すると祝福といつでも相談に乗るからどしどしメールくださいという返事。お前前言撤回かよ?約束どうなったの?そしてどうやら私は推しに妹のような存在と思われているらしい。聞いたか、他のファンの奴ら...あれ、これっていいことなのか?

相談するような大きく人に聞かせられる悩みもなく、またどしどしメール送ったって迷惑だろうから私は結局何も返せないまま六月に突入してしまった。

本当は推しに会いたすぎて、彼の働いているであろう店に押しかけたけれど結局会えなかった事とか町で見る同じような背丈だったり雰囲気だったりする人にいちいち反応してしまう事だとか推しに聞かせられないような鬱屈した感情の塊が心の中にあったけど、なんだかんだ忙しさとしんどさにいつの間にか推しは私の最優先じゃなくなっていた。

そんな時に、推しに会った。彼女連れの。

 

今までも一度、同じところでもしや、という人を見かけたことがあった。でも友達といたせいもあって、そして勇気がなくて確かめるには至らなかった。今思えばあれはきっと推しだったんじゃん、一生会えないかもとかポエムっていた自分が恥ずかしい。過去記事の二つ読み返したけどお前ほんとなんなの、ポエミーすぎる。恥ずかしい。

 

その時私は親と服を買いに来ていた。近所なので割と適当な服に適当な髪型にほぼすっぴん。だけど推しと彼女にとってはデートなので二人ともばっちりおしゃれしている。さらに気が引けた。はなから声を掛けるつもりはさらさら無かったけどさあ。

推しを見た瞬間思ったより動揺は無くて、必死に隠れなきゃという感情が湧いた。見つかりたくなかったから。あんなに会いたかった推しなのに、結局自分はアイドルとファンという関係上じゃないと彼に会うことが出来ないんだと分かった。リアコのはずだったのに。

でもやっぱり会いたい、でも会いたくない。なんだかんだ好きなんだよ。今度メールしようと思っても書くことがない。彼女になりたいとも結婚したいとも思ったけどまあ普通に考えて叶うわけがないよね、彼女は顔は見えなかったけど可愛かった。

このまま推しのことを好きっていう感情が薄れてしまえば楽だし、おのずとそうなるんだろうな。

でも、忘れたくないし好きという感情を薄れさせたくもない。推しが今もアイドルをやっていてくれたなら、本当によかったのに。

 

推しへの手紙のような気持ち悪いもの

 確かにあの場所に君はいたんだ。

その記憶すらも薄れている自分が嫌になった。
手の届きそうな距離で輝く君を、もう二度と見ることはない。大好きなあの笑顔で頷いてくれることもない。
 

今日、君のいないグループのライブに初めて行った。6人だったグループは5人になり、君は最初から居なかったかのように扱われている。

新しくファンになった人ももちろんいて、君のことを知らないファンもそのうち増えてくるのだろう。

君は最初からのメンバーで、確かにあの6人の端で輝き続けていた。

君の居場所を奪う資格が誰にあったんだろう。私のようないわゆる熱狂的なファンに挨拶もせず、何も言わずに去って行かせるような。

 

久しぶりに見た5人は、相変わらず輝いていた。

君の歌割もポジションももちろん無くなり、最初から5人だったよう。一瞬君のことを忘れてしまったが、不意に記憶が蘇った。

ああ、ここは君のソロだった。ここの振りをする君が優しくてかっこ良かった。ああ、あの二人のシンメは最高だった。

そうやって次々と記憶が引き出されていって、澱のように溜まっていく。

君に会いに追いかけた沢山の場所がまた蘇って、着ていた服も表情もしてくれたことも何もかもが奔流した。

君がいるはずだったステージに、何回目を閉じて開けてみても君はいなかった。

 

君の次に好きだったメンバーはやっぱり可愛かった。チェキも撮った。

だけど君はずっと君のままで、私の中で一番のままだ。

私だけの君にしたかった。リアコしていた。でもファンに微笑みかけたくさんのファンの中から私だけを見つけてくれる君に、これ以上求めることはなかった。

君は今もどこかで、きっと近くの街で生きている。だけど、私にとっての君はあのステージで輝く君だけなんだ。

それは今も変わらずキラキラ笑いながら歌い踊り続けている。

 

君の歌い踊る姿が、あの6人の端で輝く優しい笑顔が好きだった。

けしてかっこよくはなかったし、とりたてた魅力もあるわけではない。他の人に写真を見せたら高確率で首をかしげられるような、私にとってはそんな人だった。

でもそんな人だからこそ好きになったのかもしれなかった。

本当に好きだった。未だに忘れるなんて出来るわけない。

物販の際、グッズリストのチェキのところで君の名前だけがマジックで黒く塗り潰されていた。君の存在も塗り潰されていた。塗り潰されるようなことをした君。

私の見ていた君は塗り潰されていいような存在なんかじゃなかったのに。

 

しつこいけど、君のことが本当に好きだったんだ。

推しが度重なる不祥事で脱退した話

 推しが脱退した。

度重なる不祥事で、グループ脱退と事務所を解雇という結果。

 私が応援していた地元ダンスボーカルユニット、まだデビューして半年もたっていない。知名度はとんでもなく低いし、フリーライブが主である。まさに地元密着型のグループだ。

推しは、ついこの間成人したばかりだった。

 ファンになった日はたった2か月前の10月10日だったと記憶している。ジャニに冷めかけ、距離の遠さにうんざりして二次元にハマっている時だった。もともと地方アイドルや地下アイドルに興味があった私にとって、そのイケメンユニットは理想だった。

前日も他のイベントに出演しており、たまたまそのパフォーマンスを観た親が私に勧めてくれたのだ。

沼に落ちる予感がした私は、さっそく隣の隣の市まで彼らを見に行った。

単純に言って、神だった。

語彙力も何もないが、想像よりずっとクオリティが高くあっという間の30分。私が最初から気になっていたメンバーこそ、脱退した推しだった。

あ、落ちたと確信した瞬間があった。ステージから彼らが客席に降りてきた時、ちゃっかり最前に陣取っていた私が手を伸ばすと、推しがハイタッチしてくれたのだった。

やけに冷たい手だったのも覚えている。

 あの時から私はすっかりヲタになってしまい、県内のイベントには無理やり時間の都合を付けて行った。先月は受験生のくせに隣県まで追っかけもした。

Twitterに欠かさずいいねとリプライを送り、顔を覚えてもらえるように必死だった。デビュー当時からのファンとの対応の差が悔しかった。たった数か月の差なのに。

 そして10月は過ぎた。11月下旬になってやっとイベントがあった。隣県のドンキの駐車場の隅っこ、本当に小さい所だった。だがその分距離はほぼないと言ってよく、終了後の物販でチェキを撮るにも狭かった。二回目のチェキで少し緊張していたが、一回目よりずっと近くてお話もでき、頭をぐしゃぐしゃと撫でてももらえた。

なにより、顔を覚えてもらっただろうことが幸せだった。

歌っている最中、他のファンが手を伸ばす中私だけにハイタッチしてもらえたことが幸せだった。

 その数日後に、推しの最後のライブ(となってしまった)路上ライブのイベント出演が急遽決まり私は例に漏れず電車に乗って飛んで行った。その日は物販はなく、短い時間だったがステージも仕切りもなくこれまた近かった。

当然最前を陣取って推しを見つめていた。視線に気づき照れ笑いした推しだったが、他のメンバーのように客の中に乱入することもなくいたって普通に歌って踊っていた。今回はあんまり対応良くなかった、でも高望みしすぎは良くないし期待しないでおこう、と思って推しを見つめるのに専念した。

最後、ハケる時に推しがわざわざ私の前に来てくれた。そしてにっこり笑って手を差し出してくれた。今度も、私だけにハイタッチしてくれたのだった。

それが、最後になるとは思っていなかった。

 そのライブの後から推しの生存確認がほぼ取れなくなった。毎日のようにたくさんつぶやいていたtwitterもほとんど浮上しなかった。最初はバイトや他のことで忙しいんだ、と気にしていなかったのだが、一週間以上経つとさすがに心配になってきた。

メンバーのあげるレッスン時の風景や自撮り、食事の写真に推しはいなかった。ラジオにも5人で出演した。

また5人ねはいはい、とかわしながらも悪い予感が止まらなかった。

 Xデーがやってきた。公式アカウントのbio欄、メンバーのアカウントが記載されているところから推しのアカウントの表記が消えた。

年明けのライブの出演者の欄に推しだけいなかった。まだ脱退の発表はなかったが、これだけでもう確実であった。せめて公式発表、そして理由やできるなら最後に会いたいとつづってメールを送った。返事は来なかったが、その次の日公式発表があった。

 

 それが冒頭の内容である。当然頭が真っ白になった。涙が止まらなかった。

自分が考えていた理由と違う。家庭事情でもメンバー間のいざこざでもない。

推しの不祥事。信じられなかった。しかも『度重なる』。本人のコメントもなく、短い文章で推しの脱退は片付けられていた。

推しがいないことになっていた。

 不祥事がどんな内容かは知らない。あんな書き方ならきっと重大なことで、警察沙汰やファンに手を出したとかそういうことなのだろうか。

私が見ていた推しの笑顔は、真面目すぎる長文ツイは、全部嘘だったんだろうか。信じられないが、紛れもなく現実なのだった。

夢が叶う途中とか言ってたのはどこの誰でしたっけ。本当に歌が好きで昔歌い手もやってた推し。まだまだだけど少しずつ人気も出てきたグル―プ。自分の将来への足掛かりを自分で失ってしまったことがたまらなく悲しい。

他のメンバーや事務所に迷惑をかけ、何も言うことなく去って行った推し。私が本当に大好きで、リア恋もしかけていた彼の本当の姿だったのだろうか。

 推しが本当に大好きだった。決してイケメンとは言えなかったけど、一番スタイルが良くておしゃれで歌がうまくて、いつも笑っていた可愛い推し。オラオラ系の男らしいメンバーの中で、原宿系の不思議キャラの推しは異彩を放っていた。彼がいることでグループに多様性が生まれていたと思う。

6人だったグループ、推しの居場所はもうない。ライブに行っても、歌い踊る推しはもう見ることはない。いなかったかのように扱われ、これからきっと推しのことを知る者の方が少なくなるのだろう。

 

 いつか、推しを東京ドームのステージに立たせたかった。私が嵐コンで見たような、ペンライトの海と満杯の観客の前で輝く推しを夢見ていた。

 昨日、その夢は推しと一緒にはかなく消えてしまった。